この記事には広告を含む場合があります。
記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。
線は、僕を描く
◆出版=講談社、◆著=砥上裕將、◆装画=丹地陽子、◆装丁=大岡喜直
『線は、僕を描く』表紙イラストレーションの感想
顔をあちらに向けて、表情が見えない青年。何か思い耽っているようにも見えます。身体はやや脱力し、それは安心かもしれないし哀しみかもしれない。
人物の心情を、表情からでなく読み取らせたり想像させたりするイラストレーション。すごいです。
表情で心情を表すのは、わかりやすいけれど記号的になりがちです。そして、見る人のイメージを固定しやすい。
イメージの固定が目的の場合は、それが有効です。しかし装画のイラストレーションでは、表情を定めずに描かれたものが好まれるようです。やはり本の内容は、開いた先にあるテキストによってわからせたいがゆえでしょう。
表情をつかわずに心情を表すために、人物の姿勢や顔の向きなどに繊細なコントロールがはたらいていると思います。
イラストレーションのアイデアとして、具体的なシーンでなく心象風景のようなものを舞台に持って来ているのはすごいですね!さすがです…
こういう手法は抽象的で難しいものになりがちですが、細やかに描かれた青年という具体的なモチーフがあることによって、また主線のあるマンガテイストの丹地さんの絵柄によって、身近な印象の絵に仕上がっています。このバランス感覚は、やはり、さすが丹地陽子さんと思ってしまいますね。
心象風景の装画としてのよいところは、ネタバレにならないということですね。人物の内面がわかるものだったとしても、断片的な見せ方になることによって、もっと興味をそそられます。
読みたくなる装画。
デザイナーには…最高ですね。
丹地さんはザ・チョイス審査員の経験もある方…さすがです。