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競歩王
◆出版=光文社、◆著=額賀澪、◆装画=太田郁子、◆装丁=アルビレオ
『競歩王』表紙イラストレーションの感想
さわやかなイラストレーション…!
トラックの青色が、涼やかさとさわやかさの素材となっています。空の薄めの青とトラックの濃いめの青。気持ちがいいですね。
爽快な絵である一方、色味に白が混ざっていて優しいやわらかい印象もあります。どこかに切なさも感じさせる。
たとえば、 永井博さんの作品 は言葉にすると同じように「グラフィカルでさわやか」ですが、永井博さんがビビットで明暗をつよく表現しているのに対し、太田侑子さんの絵はミルキーで優しさが入り混じっている印象を受けると思います。
●参考:永井博さんのカバージャケット
競歩王の装画にもどり…
背景は細やかに描かれていますが、木の表現などに省略が用いられ、グラフィカルな絵です。
画面下部のほうに要素が少ないのは帯のためと思われますが、それを抜いても、上部の空と下部のトラックのところは描き込みが少なく、真ん中あたりに人や建物が集中的に配置されることで視線誘導されます。特に主役たる競技者たちに目が行くように設計されています。
よくみると、競技者の姿がトラックに反射して描かれています。まるでスケートリンクのようです。通常、このようなことは起こりません。
これが、
雨上がりのレースなど物語の特別なシーンを描いているのか、
物語のテーマを象徴しているのか、
それともイラストレーションとしてのアクセントなのか。
読んでみたらわかるかもしれない小さななぞなぞが込められた表紙です。こういうことは絵だからできることですよね。
そんな、装画としての機能に感嘆しつつ、この絵の感想としては「さわやかで優しくて素敵だ!」という点に回帰します。