まるで、それは印象派の絵画のような。『波風』表紙|装画=agoera

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『波風』

◆出版=光文社文庫、◆著=藤岡陽子、◆装画=agoera、◆装丁=大久保伸子

『波風』表紙イラストレーションの感想

絵画的という言い方を簡単にしてよいものかという迷いはありますが、agoeraさんのイラストレーションは技法においては絵画的で、見る人を惹きつけます。

家に飾っておきたい。

原画を見てみたい。

本屋の無機質なブックカバーなど外してしまいたい。帯などもできればつけないでほしい。

そんな気持ちになってしまう絵です。

深みのある筆のタッチ。では深みとはなんだろうとじっと見つめると、色の混ざり・重なりが美しさの原因であると気づきます。

おぼろげなエッジに、本来そこにないはずの色相が顔を見せます。これも迷いながらの喩えですが、印象派の絵画のようなすてきさです。

イラストレーションなので、「本を売る」という明確な目的のある絵です。それを「絵の美しさ」をもってやってのけるというところに、agoeraさんのイラストレーターとしてのすごさがあります。

一方で、agoeraさんの絵は、絵画とイラストレーションの境目はどこだろうという問いも投げかけているような気がします。

様々答えはあろうと思いますが、「解釈をさせるかどうか」というのも解答のひとつです。

それを前提にagoeraさんの絵を見ると、よい意味でたいへんわかりやすい。見る人に、これはどう見たらよいのだろう…というストレスを与えない。

絵画のタッチをもちながらイラストレーションとして高次に成立しているのは、絵としてのわかりやすさ、言い換えれば見る人へのagoeraさんの思いやりが、そうさせているのだろうと思われます。

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