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『黄金夜界』
◆出版=中央公論社
◆著=橋本治
◆装画=maegamimami
◆装丁=鈴木久美
『黄金夜界』表紙イラストレーションについて
すごいインパクト!
何といっても髪の毛の存在感がものすごいです。
目を完全に覆ってしまっている髪の毛は、目隠しのようでもあり、人物が下着姿であることもあいまって、ある種のエロスを感じさせます。
人物を描くのに目を隠してしまうなんて、こんな絵はなかなか思いつきません。
髪の毛で目隠しをさせるというイラストレーションのアイデアを、線のタッチが補強しているようにも思えます。
イラストレーションにおけるドローイングの原則は、「一本の線で描く」だそうですが、この絵においてはその基本をあえてすこしだけずらして、線をわずかに重ねて用いています。
そうして編まれた線が、髪の毛の不気味な絡まりをつよめています。
絵のタッチは、絵そのもののためにあるんだなあ・・・とあらためて思ってしまいます。
絵のアイデアという点でもうひとつ学びになるのは、シチュエーションの特殊さが想像をかきたてるということです。
ピアスはしていながら、衣服は脱がれている。
衣服は脱がれていながら、髪の毛には風を感じさせる。
人物の姿勢はゆるく、首元をさらしていて、何か思考の最中なのか。
この瞬間のこと、前後の文脈のことを、「どんな状況なのだろう」と想像してしまいます。
装画が、正しくコンテンツへの誘導を果たしているということではないでしょうか。
絵自体が魅力的でありながら、機能をさりげなく果たしていて、とてもセクシーですね。