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拳の先
出版=文春文庫
著=角田光代
装画=合田里美
デザイン=岡本歌織
『拳の先』表紙イラストレーションの感想
合田里美さんの描く人の顔はとても特徴的で、魅力的です。
表情は真剣な真顔。口をきゅっと結んだ。
合田里美さんのイラストレーションに通底するその表情。その顔が、なんだか自分の「本気だったあのとき」に重なるようで・・・というのはぼくの過剰感情移入だと思います・・・。ただそれくらい、ともすれば虚ろと言えなくもないような表情が、とても魅力的に描かれているのです。
細かく見ると目の表現が面白いんですよね。やや釣り目がちに上まぶたを描いて、その下に黒目がある。目の描き方としてはめずらしくない造形なのですが、上まぶたの線よりも薄い色で黒目が描かれているのが特徴だと思います。それにより、目力が発揮されすぎないような(いい意味で、目に集中させない。顔全体を目立たせる)効果が出ている印象。
色は全体的に淡め。背景と人物のコントラストも、人物の黒い部分(髪とか)と白い部分(肌とか)のコントラストも、落差が低い色選択です。絵全体が一体的に見える気がします。青系の淡い色のため、儚げ・切なげ・切実・・・そんな言葉が似合う人物イラストレーション。
デザインは岡本歌織さん。『夏空白花』のデザインもされている方でした。「歌織さん」という名前がすてきで記憶に残っていました。
[…] 合田里美さんの絵なんかもそうですが、感情を抑えめな表情とグラフィカルな絵柄は相性がいいのかもしれません。 […]