物語みたいな、絵本みたいな、ゲームブックみたいな。画集『Michi』|著・装画=junaida

画集『Michi』

◆出版=福音館書店

◆著・装画=junaida

本の内容としての文字は、一切ありません。
そういった意味では、「画集」というカテゴライズで間違いないはずなのですが、記事のタイトルにも書いたように、物語のようでもあり絵本のようでもあり、ゲームブックのようでもあり、やはり最後に「画集だ」と思ってしまう、不思議ですてきな本です。
表紙にあるような、家や道や階段でできた「街」が、各ページのコンテンツです。
どうやら街にはコンセプトがあるようです。
西洋風の街。
大きな機関車をベースにした街。
本(文字通りのBOOK)でできた街。
巨大な樹木を中心にできた街。
重力のルールが異なる街。

赤い街、青い街、白い街。

ページをめくるごとに、不思議な街が姿を現し、これは何の街だろうと見るひとの手を止めさせます。
疑問はすぐに、わかりやすく丁寧な絵柄によって解決するのですが、次には細部に目を凝らしたくなります。
海中の街では少女がウミガメに乗り、雪山の街ではイエティのような生き物が山壁を登っているからです。
街のあちこちで、その街に住むひとの生活があり、出来事が起こっています。

それを覗いてみたくなります。

ある見開きの街と、ページを開いた次の見開きの街とは、きちんと「道」でつながっています。
もちろん街の中でも、道は途切れることなく続いていきます。
だから、つい指で道をなぞりたくなるのです。まるで、迷路が何ページも続く本を見るときのように、道を行ったり来たり。指がなぞる道の途中には、人々の生活があり、各々の街に特徴的なギミックがあります。それを眺めていると、子どもの頃こんな街に住んでみたかったんだよなあ・・・などと懐かしい気持ちが押し寄せてきます。

ひとつひとつの街が、大変密度の濃い丁寧なイラストレーションであると同時に、人々や街そのものを楽しむ絵本であり、街の迷路や街に潜む何かを探す遊び場です。

そうして道中を楽しみながらページをめくっていくと、自分のたどってきた道が、実は物語だったことに気が付きます。新鮮でさわやかな驚きとともに、私たちは、本を逆さにめくることとなります。

街と、その細部、そして物語全体に宿る「未知」を、ぜひ手に取って味わってほしいなと思う一冊です。

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