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森があふれる
◆出版=河出書房新社、◆著=彩瀬まる、◆装画=大小島真木、◆装丁=アルビレオ
『森があふれる』表紙イラストレーションの感想
色の密度が…!すごい!
いくつの色がこの小さな画面にあるのでしょう。それぞれの色がかなり高い彩度で、細かにひしめいています。「豪華」という言葉がうかびます。
ひとつひとつの色は小さく置かれ、そのエッジは混ざり合わずくっきりとしています。同じ色でも陰の部分は塗り分けられており、一見平面的な構図の中に層が生まれています。だから、平坦には見えないのですね。
造形のリズムも楽しいです。草花のなかに現れるフクロウたち。木に宿っているものもあれば、羽を広げているものもある。草花も様々な種類が群をつくっていて、そこここに表情があります。
ひとつの面のなかに、これだけたくさんの多様な個がある。耽美で静謐でありながら、どこかに楽しさが散りばめられています。
大小島真木さんというのは、イラストレーターでなく、芸術家・表現者のようです。経歴を見ると、さまざまな美術館で空間を大胆に使った大きなサイズの絵画を展開しています。また、絵としても抽象度の高い絵が多いようです。
そんな大小島真木さんの日頃の活動を基点にこの絵を見ると、本の表紙という限られた画面に、表現活動としてでなくあくまで装丁の素材として創られた今回のイラストレーションは、一線を画す絵であることは間違いありません。
しかし、芸術活動における感性は、万人に対するセールスプロモーションの役割を担う装画にとって、つよい熱量を発揮するということに気がつきます。
こういった芸術・アートを基点とした装画やイラストレーションが、一般生活者の絵に対する関心の喚起につながったら、いいなあ…