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ハローサマー、グッドバイ
◆出版=河出文庫
◆著=マイクル・コーニイ
◆訳=山岸真
◆装画=片山若子
◆デザイン=木庭貴信
『ハローサマー、グッドバイ』表紙イラストレーションの感想
あー、もう、まじかまじかって思ってしまいました。
こんなカワイイ絵柄、うらやましすぎます。
ぼくには絶対に思いつかない造形。
女の子の髪をふわっとさせつつ、ひとつのかたまりのような描き方をする。
黒目の中心部分だけを黒くし、周辺を薄くした塗り方。
太さが一定の、丸くて緩急の少ない腕。
ひとつひとつが、意地らしくかわいらしいですね。
顔のつくり自体は比較的一般的なというか、個性的であるわけではないのに、ディテールの積み重ねで、とても魅力的な人物表現になっています。
淡くてキレイな塗りの技術がものを言っている部分はもちろんあります。でも、こういうやり方で個性的な人物描写ができるんだというのは、イラストレーションを学ぶ者にとって、特段ぼくのような初学者でかつ自分の絵柄というようなものを発見できていない人間にとっては、大きな勇気になるのではないでしょうか。
人物がこれだけ淡く描かれ塗られているのに、背景の海の濃いこと。こんなふうに人を浮かび上がらせる方法もあるんだ。
それから、スカートの模様が、、、とてもキレイです。これは塗っているのでしょうか。コラージュに見えなくもないですが、きっと塗っているのでしょう。どうやっているのかとても気になります。
海の濃い青を拝啓にしたスカートのふんわりとした形とそこに描かれた美しい絵の具の重なりは、じっと見ていると呼吸を忘れさせます。ああ。いいな。いいな。ぼくがどれだけ技術を重ねても、たぶんたどりつけない絵柄がここにあるのです。
絵は、自分の中にあるものしか描けない。不思議ですね。