イラストレーションのようなマンガのようなバランスのよさ。画集『サラリーマンイラストブック 何気ないしぐさ135』

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サラリーマンイラストブック 何気ないしぐさ135

 

◆出版=日貿出版
◆装画・著=ma2

 

最初は何気なく手に取っただけだったんです。

特に意識せずふと手に取った。

特段サラリーマンというものにフェチを持っているわけでもありません。

けれども、中身を開くと、ページをめくる手が止まらなくなる。

この本のイラストレーションの魅力は、たしかなデッサン力と線のユルさではないでしょうか。

人物の造形には説得力があります。顔は表情豊かなだけでなく、角度に応じて顔の立体的な骨格がちゃんと表現されています。サラリーマンを表すのに重要なアイテムであるシャツやスーツの表現も巧みです。しわがきちんと描かれているのですが、細かく描き込まれるのでなく適度な省略がそこにあります。見やすいです。

実は絵柄自体が特徴的だったりすごく革新的だったりするわけではないのです。

でも、たしかな造形と適度な加減でラフに描かれた線が、見る人に親しみを持たせるのだと思います。嫌われない絵柄、嫌われない筆致。それはイラストレーションにとって、「個性的である」ことと並んで大切なことかもしれません。

 

画集としてのもうひとつの魅力は、切り取るシーンのセクシーさです。

男性のぼくから見ても、セクシーなんですよね。電話中の男性が、その様子を見つめる目線に気づいてポーズを一切変えないままウインクしている、とか。

シーンについては、もしかしたらイラストレーションの技巧の話ではないかもしれません。でも、日常に埋もれる些細な何かに気づき、その気づきをできるだけ多くのひとにわかりやすく翻訳するのが、「絵」というもののひとつの役割ではないかと、この画集を見て考えたりしたのであります。

 

 

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