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『アメリカーナ』
◆出版=河出文庫出版、◆著=チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ、◆訳=くぼたのぞみ、◆装画=千海博美、◆装丁=鈴木成一デザイン室
『アメリカーナ』表紙イラストレーションの感想
線が不思議で、いい意味の違和感を感じます。
塗りはフラットでムラがないのに、衣服の模様・テクスチャとしての線が非常に細かい。
ベタ塗りと細かい線(それも、必ずしも均一でない線)の組み合わせが、人の視線をマジックテープのように一瞬でも留めるのだと思います。
千海博美さんはこの絵を、「ベニヤ板に絵の具で塗った後、版画のように表面を彫る」という技法で描いているそうです!
塗りの絵から彫る技法にたどり着いたのか、版画の技法から版そのものを絵にしようと思いついたのか、はたまた全く別のアプローチだったのか…それはわかりませんが、おそらくたくさんのテストの後に、この技法がもっとも狙う効果を出せると結論づけられたのでしょう。
ほどよくシンプライズされた人物造形に、繊細な削り線。
その組み合わせが提示するビジュアルは、視覚の探究がいかに奥深いかを私たちに教えてくれます。