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ゴンちゃん、またね。
◆出版=文藝春秋
◆著=ビートたけし
◆装画=ビートたけし
◆装丁=大久保明子
『ゴンちゃん、またね。』表紙イラストレーションの感想
ビートたけしはずるい。
人を笑わせたり映画を撮って泣かせたりすることができるのに、こんなにすてきな絵も描ける。
真っ赤な背景にこんな素敵なワンちゃんの絵が置いてある表紙、目に留まらないはずがない。
・・・・・
犬の表情が、ほんとうに素敵ですね。
黒く塗りつぶされた目、閉じた口もと。犬のありのままが描かれています。
表情やたたずまい全体から、愛らしさとどこか哀しさのようなものを見る人に感じさせる絵です。
このイラストレーションがまとう哀しさは、どこから来るのでしょうか。
タイトルや帯から、死を予感して、その連想でイラストレーションを哀しいものと決めつけてみてしまっているのでしょうか。
けれど、仮にこの絵だけを置いたとしても、まとう哀しさは消せないと思うのです。
自分は、いちばんに犬のポーズと表情の相乗効果ではないのかと思いました。
走るでも食べるでもお手をするでもなく、ただじっとおすわりしたポーズ。
舌を出すでも吠えるでもなく、また尻尾で気持ちを表現するのでもない、静謐とした表情。
元気に動く、飼い主への喜びを全身から発散する、そういう動物である「犬」が、なんとも静的な姿勢を保ってそこに写っている。ふだんと異なるその様子に、ぼくたちは生命がしぼんでいく予感をなんとなく感じ取ってしまうのではないでしょうか。
イラストレーションというのは、モチーフへもともと持っているイメージをどうコントロールするかということも、よしあしを決める要因のひとつになるのかもしれません。
思わず抱きしめたくなる、ワンちゃんのイラストレーション。
「抱きしめたい」と感情を喚起させるその魅力、すばらしいですね。