星の辞典
◆出版=雷鳥社
◆著=柳谷杞一郎
◆デザイン・装画=林真
『星の辞典』表紙イラストレーションの感想
キレ―・・・な色ですね。
これは星空を描いたイラストレーションなので、「具象画」ということになるのだと思いますが、必ずしも夜空の見た目の色味などに囚われておらず、「抽象画」の要素も入っているのかもしれません。
具象画が、ものをより正確に捉えたり、あるいはモチーフに新しい解釈を与えて、その技術と感性を味わうものだとすると、
抽象画はモチーフ(見る人が現実にすでに知っているもの)との結びつきを断ち切ったところで、「色や形そのものの美しさ」を味わうものだと捉えることができます。
この星空は、青・緑・紫と多様な色彩が用いられていて、それが絶妙に混ざり合って、心地よい色味を醸しています。
散りばめられた星たちも儚げで美しい。
意味を超えて美しい、って、いちばんすごいことかもしれません。
画材は水彩なのでしょうか。
まざりあったり、絵具の際に水のラインができていたりと、水彩ならではの不確かさが心地よさのひとつになっていますね。
淡く透明な水彩絵の具は、インパクトという点で他の素材よりもイラストレーションには不向きだと言われます。
けれども、用途と技術によっては、たぶんすばらしい効果も発揮するのだと思います。