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大人は泣かないと思っていた
◆出版=集英社
◆著=寺地はるな
◆装画=タムラフキコ
『大人は泣かないと思っていた』表紙イラストレーションの感想
キレ―・・・…と思わず声がこぼれる絵です。
色遣いの淡さが、大変に心地よいです。
人物の色は薄めに。
背景の砂浜や波の色はいっそう薄く。
相対的に人物が浮き出て見えはするものの、全体としては控え目な色の選択。
主張しないことで絵としての個性が主張されている。控え目でやさしげな絵の人間性。
すごく拡大的に解釈すると、人としてもこうありたいな・・・などと思ってしまいます。
絵の主役であるふたりの人物の後ろ姿は、イラストレーションにおいて「省略」がいかに大切な技法であるかを教えてくれます。
ふたりの衣服には、ムダなしわがありません。
髪の毛も細かい一本一本の描写はありません。
物体を、実際の線や面よりもまとめて捉えて、そこに階調をつける。
グラデーションもあまり明度差をつけてはいないものの、大きく言えば光と陰が2階調で表現されているので、自然と「光」が目を惹きます。
個人的には、とりわけ女性の髪の色の明るい部分が、画面の中でも随一の存在感を放っていて、全体的に淡い色味の中でのアクセントになっていて、大変美しいなあと思うものであります。