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ヴェネツィアの恋人
◆出版=河出書房出版
◆著=高野史緒
◆装画=佳嶋
◆装丁=坂野公一+吉田知美 welle design
『ヴェネツィアの恋人』表紙イラストレーションの感想
かなり前にストックしたのですが、どう語ってよいかわからず、寝かしてしまったイラストレーションです。
イラストレーションにとどまらず、過去の美術作品・美術史を遡らないと、この作品(そして「佳嶋さん」というイラストレーターの作品全般)は語れない気がします。実際に、佳嶋さんのHPを見てみると、「イラストレーター・画家」と記載されています。画家でもあるのです。
シュールな耽美さにあふれた作品です。
こういった世界観は、創り上げるのに永い時間がかかったろうと思います。形だけ真似して、他人が描けるものではなかろうと思います。
とはいえ、この作品(そして作品群)から、自身のイラストレーションに何かしらを学び込もうとした際、鍵となるのは「連想」でしょう。
馬のタテガミがピアノの鍵盤に見える。
バイオリンの模様は女性の前髪に見える。弦は鳥かごに見える。
とりとめもない無限の不思議さを内包したように見えるこのイラストレーションは、分解すれば小さな連想の積み上げでできているように思えます。連想で得た着想を足場にしながら、自由に空中をさまよって、常識にとらわれないイラストレーションが紡がれています。
ここまでの自由さを獲得するには、単純な努力だけでは難しいでしょう。
おそらく絵画経験のみならない先天的・後天的要因によって生み出されていると考えられるので、やはりこの絵そのものを目指そうとするのは、ふつうの人にはナンセンスです。
ただ、「連想を足場にする」「連想を紡ぐ」というやり方については、真似することができそうです。